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ニセ宇宙(第2回歌葉新人賞候補作/2003年)

世界恐怖症

出口はひとつしかなく銀色のドアノブに指紋かさねゆく 死は

パイ投げのパイが視界をよこぎって修羅場にかわる夏の教室

体温計挿んだまま眠っている キノコの餌になる夢見ている

満ちていく海にたゆたうあの髪はあたしの髪よそう告げてきて

あの月の欠けた部分でこすられた野原に薄い街がひろがる

月食のはじまる時刻おしえてもおしえても聞き返す寝言は

<時計を投げ捨てよ>灰から灰色の娘がめざめ口をきく日に

夏の終り小雨に湿る歯ブラシを託す裸体画モデルのゆびに

とりどりの瞳の色に咲き誇るポピー畑がみていた洪水

切り裂き魔きりさきマコが出没する星座通りの乙女座の髪(付近)

切り裂き魔きりさきマコの犯行と断定 ずたずただったぼくらも

雨を待つ気分で騒ぐぼくたちが本当はだれもいないということ

ぼくたちは陽気に眠る かぞえてもかぞえても数があわない集団

迷信をすべて信じるママの目にたくさんお墓が映っていた日

ペンキ缶浴びた兵士が青空を撃ちつづけてる 汐風の中


贋地球時代

「ダッチワイフに生まれ変わるの」真っ黒なリボンで結ばれていた朝顔

パーマン何号が猿だっけ? このゆびは何指だっけ おしえて先輩

それくらいいつも金魚が目の前をぴちぴちはねる死ぬ前のこと

青ざめていくあいだじゅう手拍子がキャベツ畑のほうから響く

砂糖匙くわえて見てるみずうみを埋め立てるほど大きな墓を

よく冷えたトマトジュースで洗ってと書かれたメモが帽子の中に

三回転コースターから未配達郵便物がとび散って 蝕

晴れわたる空に星座の滲みだす音楽、脳によくない音楽

だれの手か分からぬものが土塀よりつき出している 鳩を掴んで

意志のない目をして笑うスナップにお花畑の一員として

赤い目をしてない写真一枚も いちまいもなく ぼくもウサギも

子守唄の二番の歌詞をでたらめに歌うとき夢の出口が変わる

線路が消えたところだけ白い草原を怪我したように引きずって風

気がつけば口に栞をはさまれて星を見ている八月の海

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