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水の泡たち(第4回歌葉新人賞候補作/2005年)

指環から抜けないゆびで二階から二階へ鳩をとばしあう海

すじをひく星が夜明けのあちこちをコンビナートの寝息のように

窓で目があう人もいるきみはただ手ぶらで海が見たかっただけ

とびちった花びらも濡れた下生えも気にせず進め けど首がない

雨にぬれた水着を吊るす ぼくらには大西洋へ注がない河

まじわった線路は海に国道は林にきえてあの街は未来

どこまでが駅前なのか徒歩でゆくふたりでたぶん住まない土地を

レンズ雲うかべた午后をうたたねで過ごすバイクを盗まれながら

自転車をひきずる森でかなたより今うでの毛のそよぐ爆発

森の樹にぶつけた車乗り捨ててぼくらはむしろ賑やかになる

ないものが陽を浴びている公園の跡地つぼみをくわえてきた犬

夏雲にむせぶスキャット舌だして溶けない飴を見せたがる日の

手裏剣に似た生き物が宇宙から降ってきたわけではなく夏よ

見ないようにしていたものを見てしまう指のすきまに睫毛がふれて

「先生、吉田君が風船です」椅子の背中にむすばれている

風邪をひきやすい先生によろしく(と叫べば火のようにかるいメンス)

椅子に置く花束でしたともだちが生まれ変わると向日葵になる

さようならノートの白い部分きみが覗き込むときあおく翳った

道なりにゆく埋立地うめたての海の気配をこわがりながら

ひとりでは歩けない影ひきずって階段くだりはじめる雨の

飼い犬におしえた芸をきみもする いくつものいくつもの墓石

雨雲をうつしつづける手鏡はきみが受けとるまで濡れていく

夏の井戸(それから彼と彼女にはしあわせな日はあまりなかった)

砂壁のくずれる日々をながめては ぼくらはいつか穴でつながる

七時から先の夜には何もない シャッターに描き続けるドアを

あの馬鹿が旅に出るならぼくたちは旅には出ない 出ないなら出る

時計屋に泥棒がいる明け方の海岸道をゆれていくバス

蛾をつつむ素手で いつもの手紙にはいつも なんだか挿んでいたね

(運転を見合わせています)散らかったドレスの中に人がいるのだ

はしらない?ウルトラマンの3分が終りかけてる明滅のな

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