« ワーム | トップページ | 箱詰式detective »

山際君

 プールに水をためているあいだどうしてたかというと、読書です。図書館で本を読んでいたのです。夏休みのプール係だった私は同じく係の山際くん と、図書館へいった。冷房があまり効いていないのは、エネルギーを、節約するためなのです。私は雑誌コーナーで「歌劇」を読みます。山際くんは、気がつく といなくなっていた。
 私は「歌劇」をラックに戻して階段をのぼっていく。二階の閲覧室に山際くんはいて、がらんと空いた室内で わざわざ日のあたる窓際にぽつんとすわっています。私は、そっと近づいて、うしろから肩に手を置きました。山際くんはびくっとからだを反らせると、あわて て本のページをとじた。
「山際くん変! いやらしい本かくすみたい!」
 真っ赤になった山際くんは言い訳するみたいに本を私にさしだすと
「感動するよ。きみも読むといい。じゃ!」
 走ってその場から消えてしまいました。
 何なの山際くん。
 私の手の上に残ったのは、ヒトラーという男の人の伝記でした。
 なんでわたしがこんなの読むの。ヒゲがちょっと校長先生に似ていた。

|

« ワーム | トップページ | 箱詰式detective »

小説(超短篇)」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/504612/9299459

この記事へのトラックバック一覧です: 山際君:

« ワーム | トップページ | 箱詰式detective »