« 箱詰式detective | トップページ | ガールフレンド爆破 »

顔と話す

 窓から人の顔が覗いた。ここは十一階なので普通ならありえない。けれど顔は窓枠の中を動かず、目玉がぐるり部屋を見わたす途中にぼくと目が合った。何し てるのだ。そう訊ねたのはぼくではない。何って、新聞を読んでいる。すると顔はしたり顔でうなずき、訃報欄を見ただろうと云う。いやまだだ、とぼくが答え ると、じゃあすぐに読めと云った。わかった、とは答えたが釈然としない。今日の訃報欄はがらんとしている。聞いたことのない陶芸家の死を読んでいると、そ れが俺だ、と顔が云う。そうか、とぼくは答えた。じゃあ行くぞ、と云い置いて、顔は窓を離れた。ぼくは紙面に目を戻した。巨人戦の視聴率が、過去最低を記 録したという。

|

« 箱詰式detective | トップページ | ガールフレンド爆破 »

小説(怪談)」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/504612/9299872

この記事へのトラックバック一覧です: 顔と話す:

« 箱詰式detective | トップページ | ガールフレンド爆破 »